いくつかの島々を巡り、僕は今インド洋に浮かぶ小島セント・マリー島に来ています。現地語でNOSY BORAHAと呼ばれるこの島はマダガスカルの東沖に浮かぶ全長60km、幅は広い所でも10km程の細長い小さな島です。この島の人々は何故か傘が大好きで、皆色とりどりの傘を持っています。ある時、突然のスコールに遭って大きな樹の下で雨宿りしていると、傘を持った女の人が駆け込んで来ました。もともと雨の多い島なので皆傘を持っているのかと思っていたのですが、どうやら傘は雨の為よりも強い陽射しを避ける為の日傘として使われている様です。しばらくしてスコールが去ると、島のメインストリートに出来た水溜まりにアヒルの親子がやって来てのんびりと水浴びを始めました。ニワトリや仔ブタに続いて島の子供達も、雨が止むのを待ちわびて居たかの様に道路に飛び出して来ました。気持ち良さそうに水浴びする小鳥達も、はしゃぎまわる子供達の笑顔も、戻って来た強い陽射しの下でキラキラと光り輝いています。心優しい島の人々が紡ぐゆったりとした時の流れに身を委ねながら、僕は今自分達が失ってしまったものに想いを巡らせています。 |