アオザイ新聞 第24回(最終回)
約束

 

シャワーを浴びて部屋でボーっとしていると、突然電話のベルが鳴り響きました。「ロビーに人が来ています。」、フロントからの電話でした。時刻は朝7時5分。どうやら本当に着いたようです。きらびやかなヒルトンホテルのロビーにはおよそ不似合いの雨合羽を着たオジサンが、おどおどと僕を待っていました。場違いで今にも逃げ出してしまいそうなオジサンの傍らには、僕のブルーのスーツケースが、、、。オジサンはどしゃ降りの中、たった一人でサパから夜通し車を飛ばして荷物を届けてくれたようです。僕はオジサンの手をしっかりと握りお礼を言いました。心ばかりのチップを手渡すと、ようやく素朴な笑顔が返ってきました。
ホーチミンから始まりメコンデルタ、フエ、ホイアン、ハノイ、ハロン湾、サパ、と巡ったベトナムの旅も今日で終わりです。それぞれの場所で様々な事に出会い、色々な人々と触れ合いました。そんな旅を通して僕が感じたのは、ベトナムの人々の持っているエネルギーでした。人肌が発散している暖かで健康的なエネルギー。ベトナムを旅していて絶えず感じた[懐かしさ]は、僕たちもかつて持っていた暖かなエネルギーの記憶だったのかもしれません。ベトナムの人々が発散しているこの暖かなエネルギーも、いつか冷えてしまう日が来るのでしょうか?そして僕たちもかつてのような暖かなエネルギーを取り戻せる日が来るのでしょうか、、、。[完]

[あとがき]ベトナムへ出かけたのが昨年10月ですから、すでに9カ月あまりの歳月が経ってしまいました。この間僕はインド、オーストラリア、ハワイ、ブルガリア、ルーマニア、そして韓国へは数回出かけました。例年にないほどのロケ・ラッシュでアオザイ新聞の間隔もすっかり開いてしまいました。こうして終わった旅を振り返ると、旅の途上とは又違ったものが見えて来るような気がします。それも又旅の楽しみのひとつなのかもしれません。長い間ご愛読ありがとうございました。

 
    編集長 大塚佳男  
   
  BACK NEXT  
TOP   サイトマップ mail facebook

2012 Muy Corporation, All rights reserved.
Page created and maintained by Sugi.