ペンギン新聞 最終回
終わりなき旅


 

操舵室の大きな窓の前をアホウドリがゆったりと横切ってゆきます。見渡す限り海が続く、そんな景色を何日見続けてきたのでしょうか。あれ程荒れ続けた海も、ドレーク海峡を抜けた今はウソのように穏やかに静まりかえっています。あと数時間もすると船はアルゼンチン最南端の街・ウシュワイアーの港に帰り着きます。9日間の南極クルーズもいよいよ終わろうとしています。この旅が始まる前、南極の風景にはどんな音楽が似合うのか想像を巡らしていました。サハラ砂漠では満天の星空を眺めながらピンク・フロイドを聞いて完全にトリップしてしまったので、今回はやはり環境音楽っぽいアンビエント系かな、などと思い<ENYA>とか<坂本龍一>のピアノ・ソロとかを持って行ったのですが、実際一番気分にあっていたのは当時リリースされたばかりのミスチルのアルバム<Discovery>でした。一面氷に閉ざされた海峡を分け入って進む今回のクルーズは、まさにDiscoveryそのものでした。
この旅が終わってひと月もすると、僕は50才の誕生日を迎えます。目の前を飛び交うアホウドリのように世界を自由に飛び回りたい。そんな子供の頃からの夢を果たした今回の旅は、僕が僕自信の為に贈ったバースデイ・プレゼントでした。アルバム<Discovery>の1曲<終りなき旅>でミスチルは歌っています、「もっと、もっと、大きなはずの自分をさがして、、、」。 僕の<終わりなき旅>も続きます。

 
       
     
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