ベトナムを舞台にしたフランス映画「インドシナ」（主演カトリーヌ・ドヌーブ）や、「ラ・マン」に出てくる水上マーケットのシーンがずっと心に残っていて、いつか見てみたいと思っていました。この水上マーケットの本場は、南部のメコン河流域に拡がるメコンデルタ地帯です。僕はこの地域で一番大きなマーケットのあるカントー（Ｃａｎ Ｔｈｏ）という街を訪れました。水上マーケットは夜明けと共に始まります。まだ日の出前の薄暗い河をたくさんの船が行き交い、あたりが次第に明るくなり始め朝陽が射し始める頃、マーケットは最も賑わい始めます。野菜や、果物、魚、を始め洗剤や化粧品といった日用雑貨からジュース類まで、様々な品物を満載したボートが行き交います。大半は１～２人乗りの小さなボートで、ビッシリと埋まった船の間をスイスイと縫うように通り抜けてゆきます。大きな船にはたくさんのボートが横着けされ品物のやり取りが行われています。人々から発散される圧倒的な生命力のエネルギーに吸い寄せられるように、僕はシャッターを切り続けました。
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