インドシナ半島の付け根から先端まで南北に長く伸びたベトナムの中央部に、ベトナム王朝最後の都フエがあります。ホーチミン、メコンデルタと活気溢れる南部に比べると、古都フエはどことなくノンビリとしています。街はゆったりと流れるフォーン河を挟んで、王宮のある旧市街とホテルなどがある新市街に分かれています。新市街と言ってもビルらしき物はせいぜい５～６階建てのホテル位で、何処が［新市街］？といった感じです。フォーン河を行き交う船も手漕ぎのものが多く、メコンデルタで響き渡っていたポンポンというエンジン音は時たま聞こえる程度です。フエで一番の見どころは、ベトナムで初めての世界遺産となった王宮、皇帝廟等の歴史的建造物です。これらグエン朝（１８０２～１９４５年）時代の建造物はかなり中国風で、王宮の太和殿などはミニ紫禁城といった感じです。ただフエはベトナム戦争で激しい戦場となった為、数多くの貴重な建造物が被害を受けました。王宮は大半が破壊され、戦後再建された太和殿をくぐり内部に入ると、ただの空き地が虚しく広がっています。もしかしたら、世界遺産に指定するべき物は戦禍を逃れた建造物ではなく、破壊し尽くされた瓦礫の山なのかも知れません。
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