ペンギン新聞 第6回
ローリング60


 

夜半になって船がゆらゆらと揺れ始めました。遂にきたな、という感じ。今夜からいよいよ世界の難所ドレーク海峡の横断が始まります。船の揺れには二種類あって、進行方向に向かって左右に揺れる横揺れをローリング、前後に揺れる縦揺れをピッチングというのですが,いよいよ来ました激しいローリング。それもいきなりかなりの激震!僕の二段ベッドは進行方向と横向きにセットされているのですが、頭と足が交互に持ち上がり、どんな感じかと言うと、シーソーの真ん中に寝そべって両側からギッコンバッタンと責められてるみたい。それも血が昇りそうなほど頭が下がったと思ったら、今度は立ち上がれそうな程頭が上がって、僕の身体はベッドの上をズルズルとスライドして足と頭が5秒間隔で壁にぶつかる。これに時々気まぐれなピッチングが加わると、これはもうハトヤの魚状態。(知ってます?伊東に行くならハトヤのTV・CMの跳ねてる魚)必死でベッドの小さな手すりにしがみつかないと、二段ベッドの上段から転落する〜。下の段ならベッドから落ちてもどおってことないけど、上から落ちたらかなりヤバイ。始めてわかった3万円の価格の差!とは言え下段にもトラブル発生。なんとベッドの下に入れた二人のスーツケースが僕たちと同じように滑り出し、5秒間隔で壁に激突しものすごい音を立ててとても寝ていられない。荷物をなんとか固定しないと下の人かなりうるさくて眠れないだろうな、と思いつつとても怖くてハシゴで下になんか降りられない。ただひたすら激しい揺れに耐えているうちに、恐ろしいもので揺れがなんとなく心地好く、長旅の疲れも手伝ってグッスリ眠ってしまいました。

翌朝、目を覚ましても激しい揺れは相変わらず続いています。一応8時に朝食ということになっていたので、必死でハシゴを降りると床に足がついたとたんひっくり返りそうな程の揺れ。今までは寝転んでいたのでそれでもマシだったのですが、立ち上がってみて解るとてつもない揺れ!そういえば乗船時のガイダンスで、船内を歩く時は手すりにつかまるようにという指示があったけど、何かにつかまらずに歩くことなど全く不可能。洗面所で顔を洗おうと思っても、片手で掴まっていないと立っていられないのでかなり難しい。歯を磨くのはかなりこつがいる。左手にコップ、右手に歯ブラシという訳にはいかず、まず歯ブラシで磨いておいてコップに持ち替えて口を漱がないと、掴まる手がなくなってしまう。ヨロヨロと部屋から出ても、通路や階段には人の気配が全くといっていいほどしない。こんなに揺れてるのに本当に皆朝食食べるのかなぁ、と半信半疑で階段を昇りダイニングルームの入り口まで辿り着くと、、、、。
 
       
     
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