ペンギン新聞 第7回
難民生活


 

ダイニングルームの扉は閉まっていました。中には誰もいないようです。ン?どうなってるの、これは!視線を下に向けるとダイニングルームの入り口の床に人が座っています。それも15〜6人、皆僕を見つめています。ン?まるで難民のように床でパンやバナナを食べています。普段はティーラウンジになっているはずのそのスペースは、まるで被災者が集まった体育館のよう。置いてあるイスは全てテーブルにヒモで縛りつけられています。そのままにしておくとイスが転がっていって危険な上、イスに座るとイスごと転んでしまうと言う理由でこの難民生活が始まったようです。皆の話を総合すると、揺れがひどくて厨房が危険で使えない上にコックが船酔いした!とのこと。ないしろ初めての経験なので、この揺れが普通なのか尋常でないのかさえ解らない訳で、乗組員のコックが船酔いするってことは、、、。どうもこれは、尋常でない揺れらしい、、。そこに集まった人の噂話によると、昨晩すでに激しい揺れのために頭を何処かにぶつけて重傷を負った人がいるらしい。
結局この朝、朝食に来た強者は17〜8名、年齢、性別を越えてただ船に強い鈍感な人達。残りの人達はといえば、皆ベッドの上でひたすら激しい船酔いと戦っている様子。僕は選ばれた少数の精鋭だったようで結局このクルーズの間中、一度も気持ち悪くもならなかった!と言っても何もしなかったと言う訳ではなく、この日のためにたった1錠で24時間効く上、ひたすら良く眠れる乗り物酔いの薬をニューヨークの空港でゲットし、万全の態勢で備えていた訳です。ちなみにAVOMINEというこの薬、以前オーストラリアで見つけて以来厳しい状況の時に愛用しているのですがかなり良く効きます。今回のツアーでも行きにひどい船酔いをした人にこの薬をあげたところ、帰りはケロッとしていました。ちなみに日本で買った乗り物酔いの薬は全く効かなかったというのが、皆の統一見解でした。手首にはめると酔わないというアメリカ製のバンドをはめた人もゲロゲロ吐いていました。以前オーストラリアでダイビングのライセンスを取った時も小さな船でかなり揺られて、その時はインストラクターの勧めでスクープという酔い止めの薬を使いました。これは耳の後ろ側に貼って三半器官を麻痺させるという荒っぽいやつなのですが、あれは良く効いたな〜。
ところで床の上の食事。これはかなりアクション系。床に座っているにもかかわらず、かなり不安定。ちょっとでも気を許すと、片手にバナナやコップを持ったまま滑っていって、反対側の壁に激突。壁ならまだしも鉄製のテーブルの足にぶつかるとこれはかなり痛い!それでも一人でぶつかるのはまだマシな方で、上流から滑ってきた人にぶつかられそのまま一緒に滑って更にもう一人位巻き添えにして、テーブルにぶつかった時の痛さ、これはもうプロレス級。おまけに縛ってあった筈のイスが何かのはずみにヒモがほどけて、上から飛んできてこれはもう完全にプロレスの世界。あれほど準備は万全にしたつもりだったのに、まさか滑らないズボンやテーブルにぶつかっても痛くないパッド入りのウェアー(スケボー用のが良いかな?)や、寝ていても滑らないパジャマのことまで気付かなかった!朝食アドベンチャーを終えてしまうと別にやることもないので、とりあえず部屋に帰って又少しおとなしく寝てようかなと、ヨロヨロと階段を降りて部屋に辿り着くと、、。「ウッ、臭〜い。」「何だ?この匂い??」

 
       
     
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