ペンギン新聞 第17回
けったいな人々


 

船が南極大陸を離れドレーク海峡に突入すると、再び激しい揺れが始まりました。行きの4日間ですっかり馴れてしまった僕は、片手にコーヒーカップを持ったまま歩き回る技をマスターし、初日には手すりにしがみついていたのがウソのよう。揺れ自体は行きよりもむしろ激しい位なのに、大半の人(2/3位)が食事に出て来られる様になりました。人間、何にでも馴れるものですね。ただ馴れは又油断を生むもの。帰りのドレーク海峡では、とんでもない事故が続出するのですが、、、。
窓の外を見てももうペンギンもクジラもアザラシもいないので、僕は船内のマン・ウォッチングに切り替えることにしました。今僕の前で朝からビールを飲んで顔を赤くしてるオジサン(50代なかばの)は、通称ペンギンパパ。体形がペンギンみたいだからではなくて、なんとこのオジサン埼玉の自宅にペンギン飼ってるんです!!「エッ、ペンギン飼ってるって、一体どうやって手に入れたんですか?そのペンギン。」と言う僕の質問にペンギンパパ、ビールのグラス片手にこともなげ「当たったんだよ、TVで。」「?エッ?TVで?ペンギンが、当たったの?」「そう、賞品でペンギンが当たったの。」なんじゃ、それ??詳しく聞いてみると、<幸せ家族計画>というTV番組があるのですが、これで見事難関をクリアーしてペンギンをゲットしたとのこと。なんでもこの番組、かなり難しい課題を与えられるのですが家族が協力してこの難関をクリアーすると300万円相当の賞品が貰えるというもの。賞品は300万円以内なら自分で好きなものを貰えるということで、兎に角ユニークなプランなら採用されるだろうとウケを狙って、「ペンギンが欲しい」と言ったらしいです。ペンギン1羽、300万円。TV局の人の話だと、輸送費だの、なんだかんだで本当に300万位かかったらしい。ペンギンパパの方も屋上に空調付きの大きなお風呂場のようなものを造ったり、1羽じゃ可哀相ということでもう1羽買ったりとかなり物入りだったようです。おまけに、ペンギンが初めなつかずエサを食べなかったので、無理矢理エサのアジを食べさせた為すっかり嫌われてしまい、パパを見ると逃げ出す始末。と言うわけで、ペンギンにはかなり苦労させられた筈なのに南極まで来るところを見ると、パパもかなりのペンギン好きらしい。自分で買った方のペンギンは、どうも水族館からの横流しらしいく値段は100万位だったとのこと。ちなみにペンギンパパは元警察官、今は白蟻駆除の会社の社長。風貌はよくTVの<刑事もの>やなんかで出てくる、人情味のあるほうのデカといった感じ。ほんと,人って見かけによらないですよネ。

 
       
     
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