らくだ新聞 第13回
カラーン・ミナレット


 

二つ目のタキを抜けたすぐ先の左手に、ブハラのシンボル、カラーン・ミナレットが見えてきました。タジク語で[大きい]を意味するこのミナレットの高さは 46m、ブハラで一番高く美しい光塔です。外装はタイル貼りではなく、茶色のレンガの積み方を工夫して独特の凹凸模様を浮き上がらせています。基底部が太 く上部にゆくに従って細くなってゆく優れた構造のおかげで、1127年に建てられて以来大地震やジンギス・ハーンの破壊にも耐え、今日に至っています。ひ ときわ高く遥か彼方からでも見つけられるこのミナレットは、砂漠を旅するシルクロードのキャラバンにとって陸の灯台としての役目も果たしてきました。ミナ レットの脇には一万人の信者が礼拝できる巨大なカラーン・モスクがあります。僕は誰もいなくなった夕暮れ時に、このモスクの中庭に一人で佇んでいたのです が、何かとても敬虔な気持ちになる所でした。このモスクの向かい側に建っているミル・アラブ・メドレセは、今回僕がウズベキスタンで見た建築物の中で一番 好きになりました。このメドレセの夕景が見たくて、僕はブハラに滞在中は毎日ここへ通いました。向い側のモスクの入り口にカメラをセットし、夕暮れ時の光 を浴びて刻刻と表情を変えてゆくメドレセを撮り続けました。黄昏時の砂漠の光線の美しさは、たとえようもなく儚く、甘く、そして透明です。太陽が地平線に 沈むころ、空の色はピンクからうす紫、そしてブルーへと変わってゆきます。やがてメドレセの独特の緑がかったブルーの丸屋根が深いブルーの闇に溶けはじ め、砂漠に夜が訪れます。撮影の余韻に浸りながら、僕はブラブラと元来た道を歩いていました。「ン、、?」。通りの向こうに、見覚えのある後ろ姿が見えた ような気がしました。「もしかして?」と思って足早に追いついてみると、やはりM君でした!サマルカンドでは結局会えずじまいだったので、もう会えないか なぁと思っていたのですが、、。驚いた事にM君は、僕がこの近くにいるらしい事を古道具屋のおじさんから聞いて知っていました!昼間このあたりで得体の知 れない古道具を売っているお店をひやかしたのですが、M君も同じお店に立ち寄ったらしくその時に僕の事が話題になったようです。ブハラは狭い街です。まる で僕が住んでいる東京の下町のように、ご近所の目が光っていました。

 
       
     
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