旅も後半になると、瞬く間に時が過ぎてゆきます。よく旅は人生にたとえられるけど、本当にそうかもしれません。始めての土地に来て、見るもの、聞くもの皆 新鮮で、たった一日の内に沢山の事が起きて、良く考えてみると出発してからまだ一日しか経ってない。旅の始めは、いつもそんな感じでゆっくり時が流れてゆ きます。なにか、子供の頃に似ています。でも旅も終わり頃になると、あっと言う間に一日が過ぎて僅か10日前の出来事が遠い昔のように感じられる。東京で 生活している時は、10日前も昨日もなにも変わらないのに。僅か10日前が遠い昔に感じられるのは、やっぱり時が濃密に流れているから。旅の中で何かが見 つかるとしたら、僕が見つけたのはそんな時の流れの不思議かもしれません。ヒバで過ごした3日間も瞬く間に終わり、タシケントに戻る日がきました。帰路は ヒバから車で30分ほどの所にあるウルゲンチの空港から、直接飛行機でタシケントに向かいました。小さな飛行機は満席の上、隣には席からはみ出しそうな 太ったオヤジが座っています。タシケントには一晩泊まって、翌日の夜遅くの便で日本に戻ります。僕はぼんやりと、この旅で起きた出来事を思い起こしていま した。機内食が運ばれ食事が始まると、隣の席の太ったオヤジが僕に話しかけてきました。見かけによらず愛想がよく、横顔はジャン・レノを太らせたような感 じ。色々話しかけてくるのですが、なにしろウズベキ語なので、僕はチンプンカンプン。「?」という表情をしていると、太ったジャン・レノは自分を指差しハ ンドルをきるしぐさをしました。そうか!「俺の職業はドライバー。お前の仕事は何か?」と聞いてるんだ。これをきっかけに、一気に会話が盛り上がり始めま した。サンダルばきのオヤジの職業は、長距離トラックの運転手。長距離トラックと聞くと東京から北海道位をイメージしたのですが、なんとウズベキからドイ ツまで8日間かけて走るのだそうです。何人のドライバーで走るのか尋ねたところ、ウズベキでは1人で、カザフスタンでは3人、ロシアでは5人、ポーランド では3人、と国によってドライバーの数が変わるらしいです。ドイツ以外にも、イスタンブールまで2日、スペインまで3人のドライバーでなんと4日で走り 切ったこともあるそうです!これだけの会話がジェスチャーと機内紙に載っている地図だけで出来ちゃうなんて、ビックリ、、、。それでもうまく伝わらない と、スッチーをわざわざ呼んで通訳させたりして。お互いにその気になれば、言葉なんて分からなくても結構会話を楽しめるものですね。 |